半月板逸脱について:変形性膝関節症への入口
目次
Toggle■ 半月板逸脱とは何か?
半月板は、大腿骨と脛骨の間でクッションの役割を果たす重要な組織です。
本来は関節の中に収まっていますが、何らかの原因で関節外へはみ出してしまう状態を「半月板逸脱」と呼びます。
特に内側半月板で多くみられ、MRIや超音波検査で評価します。一般的に、3mm以上の逸脱があると、機能的な問題を伴うことが多いとされています。

半月板が関節の外へ押し出されると、本来の荷重分散機能が十分に働かなくなります。
その結果として、関節軟骨にかかるストレスが局所的に増加し、
軟骨のすり減り=変形性膝関節症の進行につながると考えられています。
つまり、半月板逸脱は変形性膝関節症への入口(早期変形性膝関節症)ということもできます。
■ 半月板逸脱と変形性膝関節症の進行の関係
近年の研究では、半月板逸脱は単なる「結果」ではなく、変形性膝関節症を進行させる因子のひとつとされています。
とくに以下のようなケースでは注意が必要です。
・ 内側型変形性膝関節症(O脚)
・ 内側半月板後根断裂(MMPRT)
・ 体重増加や下肢アライメント不良
O脚では内側に体重が集中します。そこに半月板逸脱が加わると、衝撃吸収機能が失われ、軟骨損傷がさらに進行しやすくなります。
つまり、「アライメント異常」と「半月板逸脱」は、互いに悪循環を形成する関係にあります。
■ 保存療法だけでよいのか?
初期〜中等度の変形性膝関節症では、まず保存療法を行います。
・ 大腿四頭筋・股関節外転筋の強化
・ 体重管理
・ 足底板(インソール)
・ ヒアルロン酸注射 など
これらにより症状が安定することも多いです。
しかし、明らかな逸脱を伴い、かつO脚が強い場合には、保存療法だけでは進行を十分に抑えられないこともあります。
■ 骨切り術という選択肢
ここで重要になるのが骨切り術という選択肢です。
例えば、骨切り術の一種である高位脛骨骨切り術(HTO)は、脛骨を切って下肢のアライメントを矯正して、体重のかかる位置を内側から外側へ移す手術です。
これにより、
・ 関節の内側への荷重を軽減
・ 半月板へのストレスを減少
・ 軟骨のさらなる摩耗を抑制
といった効果が期待できます。
近年では、半月板後根断裂+逸脱を伴う症例に対して、半月板修復術と骨切り術を組み合わせることで、半月板の位置が改善するという報告もあります。
つまり、骨切り術は単なる「O脚矯正」ではなく、半月板機能を回復させる環境を整える手術ともいえます。
■ どの段階で骨切り術を考えるか?
一般的には、
・ 比較的若年〜活動性の高い方
・ 内側型変形性膝関節症
・ O脚変形が明らか
・ 半月板逸脱や後根断裂を伴う
といった条件がそろう場合に適応を検討します。
末期の変形性膝関節症では人工関節置換術が選択されますが、まだ関節温存が可能な段階であれば骨切り術は非常に有力な選択肢です。
■ 当院で大切にしていること
東京整形外科ひざ・こかんせつクリニックでは、
・ レントゲンによるアライメント評価
・ MRIによる半月板逸脱の評価
・ 症状と画像所見の整合性の確認
を丁寧に行い、患者さま一人ひとりに合わせた治療方針をご提案しています。
半月板逸脱は、単なる画像所見ではなく、将来の変形進行に関わる重要なサインです。
「まだ軟骨はそれほど減っていない」と言われた段階でも、逸脱の有無によって治療戦略は変わります。
■ まとめ
半月板逸脱は、
・ 荷重分散機能を低下させる
・ 内側型変形性膝関節症の進行を促進する
・ アライメント異常と合わさると悪循環を形成する
という点で非常に重要な所見です。
そして、骨切り術は、関節を温存しながら進行を抑えるための戦略的な治療です。
膝の痛みが続く方(レントゲンで異常がなくても)、O脚を指摘された方、MRIで半月板の逸脱を指摘された方は、
一度専門的な評価を受けることをおすすめします。
当院では、保存療法から人工関節、再生医療に加え、骨切り術の適応に至るまで、段階に応じた治療をご提案しております。
膝の将来を見据えた治療を、一緒に考えていきましょう。
参考文献
1. Costa CR, et al. Medial Meniscus Extrusion on Knee MRI: Is Extent Associated with Severity of Degeneration or Type of Tear? Am J Roentgenol. 2004.
2. Zeng M, et al. Association between medial meniscal extrusion and knee structural progression in adults with symptomatic knee osteoarthritis — a prospective cohort study. Skeletal Radiology. 2025.
3. Kobayashi K, et al. Enlargement of medial meniscal extrusion increases a risk of early knee osteoarthritis and structural changes. Osteoarthritis and Cartilage. 2023.
4. Horita K, et al. High Tibial Osteotomy Alone Does Not Decrease Medial Meniscal Extrusion in Cases of Medial Meniscus Posterior Root Tear. Arthroscopy. 2025.
5. Lee CH, et al. Increased medial meniscus extrusion led to worse clinical outcomes after medial opening wedge high tibial osteotomy. Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy. 2023.
東京整形外科ひざ・こかんせつクリニックは、
ひざ・股関節でお困りの方が、再び自分らしい生活を取り戻すためのパートナーでありたいと考えています。
当院では、レントゲンだけで判断せず、丁寧な診察とリハビリ評価を通じて、痛みの根本にアプローチしています。
「原因がわからない」「どこに行っても改善しない」と感じている方も、どうぞ一度ご相談ください。
渡部直人 専門分野 膝・股関節・骨粗鬆症

日本整形外科学会専門医、日本骨粗鬆症学会認定医、医学博士
ひざや股関節が痛くて来院された方が診察と検査を通じて痛みの原因を特定し、正しい治療を経て痛くないひざ、股関節を取り戻す手助けをさせていただきたいと思っています。