大腿骨内顆骨壊死症

大腿骨内顆骨壊死症とは

大腿骨内顆骨壊死症は、中高年に多く発症する膝の疾患の一つです。特に60歳以上の女性に好発し、突然の膝の痛みを伴うことが特徴です。発症直後はレントゲンで異常が確認できないこともあり、診断にはMRIが重要な役割を果たします。病期が進行すると、膝関節の変形が進み、変形性膝関節症へ移行することもあります。 大腿骨顆部(かぶ)は、膝関節を構成する大腿骨の末端部分です。この部分の骨組織が何らかの理由で壊死し、膝の痛みを引き起こす病気が大腿骨内顆骨壊死症です。 特発性の場合、内顆:外顆の比率としては内顆に好発します。発症すると、歩行時や夜間に突然の強い痛みを感じることが多く、時間とともに痛みが増していくこともあります。早期診断と適切な治療を行わないと、膝関節の破壊が進み、最終的には人工関節の手術が必要になるケースも少なくありません。

原因とリスク因子

大腿骨内顆骨壊死症の原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、以下の要因が関係していると考えられています。

  1. 血流障害 骨の栄養を供給する血流が不足すると、骨組織が壊死する可能性があります。加齢に伴い血管が狭くなることや、動脈硬化の進行がリスク因子となります。
  2. 軽微な骨折(疲労骨折) 骨密度が低下すると、日常生活の動作でも骨に微細な骨折が生じやすくなります。これが壊死のきっかけとなることがあります。
  3. 骨粗鬆症 加齢や女性ホルモンの減少によって骨が脆くなると、大腿骨の内側に大きな負担がかかりやすくなります。特に閉経後の女性はリスクが高いとされています。
  4. ステロイドの長期使用 自己免疫疾患や膠原病の治療でステロイドを長期間使用している場合、骨の血流が悪くなり、壊死を引き起こすことがあります。
  5. 変形性膝関節症との関連 変形性膝関節症が進行すると、膝の負担が偏ることで局所的に骨壊死が起こることがあります。

主な症状

大腿骨内顆骨壊死症の典型的な症状は以下の通りです。

  • 突然の膝の激痛(特に歩行時)
  • 夜間痛・安静時痛(じっとしていても痛む)
  • 膝の腫れ・熱感
  • 階段の昇降や歩行困難
  • 関節のこわばりや変形
    特に、痛みの発症が急激であることが特徴です。発症初期は安静にしていれば痛みが軽減することもありますが、進行すると持続的な痛みが続きます。

診断方法

  1. レントゲン(X線検査) 初期段階ではレントゲンに異常が映らないことが多いですが、病期が進むと関節面の変形や骨壊死部分が確認できます。
  2. MRI(磁気共鳴画像診断) 最も有効な診断方法です。初期の段階でも骨壊死の範囲や周囲の炎症状態を詳細に評価できます。
  3. 骨シンチグラフィー 骨の代謝状態を調べる検査で、壊死の範囲や血流障害の有無を確認できます。

病期分類(腰野分類)1)

大腿骨内顆骨壊死症は、4つのステージ(病期)に分類されます。

ステージ 診断方法 特徴
Stage1(発症期) MRIでのみ確認可能 レントゲンでは変化なし。膝に強い痛みが出ることが多い。
Stage2(吸収期) レントゲン・MRIで確認可 壊死部分が吸収され始め、骨が透けて見えるようになる。
Stage3(完成期) レントゲンで明瞭に確認可 骨硬化が進み、石灰沈着が起こる。
Stage4(変性期) 関節の変形が進行 変形性膝関節症へ移行する。

治療法

①保存療法(初期~中期)

軽症例や早期発見の場合は、保存的療法が選択されます。

  • 鎮痛剤の使用(痛みを軽減)
  • リハビリテーション(膝周囲の筋力強化)
  • 足底板(インソール)の使用(膝の負担を減らす)
  • 骨粗鬆症治療薬の服用(骨密度を維持)
  • 体重管理(膝への負担軽減)

②手術療法(進行例)

保存療法で改善しない場合や、壊死範囲が広い場合は手術が検討されます。

高位脛骨骨切り術(HTO)

脛骨の角度を変えて膝の負担を軽減 自分の関節を温存できる

人工膝関節単顆置換術(UKA)

壊死部分のみを人工関節に置き換える 。運動機能が温存されやすい

人工膝関節全置換術(TKA)

末期症状の場合、膝関節全体を人工関節に置き換える

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