臼蓋形成不全

臼蓋形成不全は、股関節の構造に関する先天的または後天的な異常で、骨盤側の寛骨臼(臼蓋)が十分に発達しておらず、大腿骨頭を適切に覆えない状態を指します。この状態では、股関節の安定性が低下し、関節に過度な負荷がかかることで、将来的に変形性股関節症へと進行するリスクが高まります。

原因と発症のメカニズム

臼蓋形成不全の原因は多岐にわたりますが、主に以下の要因が挙げられます。

  • 先天的要因:出生時からの寛骨臼の発育不全や、発育性股関節形成不全(旧称:先天性股関節脱臼)など。
  • 遺伝的要因:家族に股関節の疾患がある場合、発症リスクが高まるとされています。
  • 環境要因:出生時の胎位(逆子など)や、乳児期の股関節の動きを制限する育児習慣(おくるみで脚を伸ばすなど)が影響することがあります。

これらの要因により、寛骨臼の発育が不十分となり、大腿骨頭を十分に覆えない状態が生じます。その結果、股関節にかかる負荷が局所的に集中し、関節軟骨の損傷や変形性股関節症の進行が促進されます。

症状と進行

寛骨臼形成不全自体は、初期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると以下のような症状が現れることがあります。

  • 股関節の痛み:運動後や長時間の立位・歩行後に痛みを感じることがあります。
  • 可動域の制限:股関節の動きが制限され、特に内旋(股関節を内側に捻る)や屈曲(股関節を曲げる)が困難になることがあります。
  • 歩行異常:足を引きずるような歩行や、左右のバランスが崩れることがあります。

これらの症状が進行すると、日常生活に支障をきたすことがあるため、早期の診断と適切な対応が重要です。

診断方法

寛骨臼形成不全が疑われる場合、まず行われるのがレントゲン(X線)検査です。

レントゲン検査では何がわかるの?

レントゲンは、股関節の骨のかたちやバランスを写す検査です。
この検査で、骨盤側の受け皿(寛骨臼)が大腿骨の骨頭をどれくらい覆っているかを調べます。
通常は、股関節をしっかり包み込む形になっているのが理想ですが、臼蓋形成不全があると、大腿骨頭がはみ出すように見えるのが特徴です。

角度の計測で診断されます

専門的には、「CE角」や「Sharp角」といった角度を測定し、骨の発育具合を数値で評価します。

  • CE角(中心-縁角):
    どれくらい大腿骨頭が覆われているかを示す指標です。
    20度以下だと、寛骨臼形成不全の可能性が高いとされています。

CE角

  • Sharp角(シャープ角):
    寛骨臼の傾きを示す角度です。45度以上で異常の疑いがあります。

Sharp角

これらの角度を測定することで、股関節の安定性や将来的な変形のリスクを評価できます。

必要に応じてMRI検査も

レントゲンでは骨の形はわかりますが、軟骨や関節のクッション(関節唇)などの状態までは見えません。
そのため、痛みが強い場合や手術を検討する際には、MRI検査で内部の状態を詳しく調べることがあります。

治療法

寛骨臼形成不全の治療は、症状の程度や進行状況に応じて、保存療法と手術療法が選択されます。

保存療法

初期段階や症状が軽度の場合、以下の保存療法が行われます。

  • 生活習慣の改善:体重管理や股関節に負担をかけない姿勢・動作の指導が行われます。
  • 運動療法:股関節周囲の筋力強化や柔軟性向上を目的としたリハビリテーションが行われます。
  • 薬物療法:痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが処方されることがあります。

手術療法

保存療法で効果が得られない場合や、症状が進行している場合には、以下の手術療法が検討されます。

  • 股関節周囲骨切り術(Periacetabular Osteotomy:PAO):自分の骨を活かして臼蓋の被覆を改善する手術で、関節軟骨が比較的保たれている若年者に適応されます。
    PAOを受けた患者様の5年後の股関節温存率は90%以上と報告されています。
  • 人工股関節置換術(THA):関節の変形が進行し、軟骨が消失している場合や高齢者に対して行われる手術で、股関節を人工の関節に置き換えることで痛みの軽減と機能の改善を図ります。
    手術の選択は、患者様の年齢、活動レベル、関節の状態などを総合的に考慮して決定されます。
参考文献
  • Troelsen A. Assessment of adult hip dysplasia and the outcome of surgical treatment. Dan Med J. 2012 Jun;59(6):
  • Harris-Hayes M, Royer NK. Relationship of acetabular dysplasia and femoroacetabular impingement to hip osteoarthritis: a focused review. PM R. 2011 Nov;3(11):1055-1067.e1.
東京整形外科ひざ・こかんせつクリニック
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