変形性股関節症とは
変形性股関節症は、大腿骨頭と寛骨臼を覆う軟骨がすり減ることにより、股関節に痛みを引き起こす進行性の疾患です。
初期段階では、歩き始めや立ち上がるときに股関節の違和感や軽い痛みを感じることが多くみられます。しかし、症状が進行すると、股関節の動きが徐々に悪くなり、靴下を履く、足の爪を切る、あぐらをかくなどの日常動作が困難になることがあります。
さらに進行すると、歩行時の痛みが強くなり、長い距離を歩くことが難しくなります。また、股関節の動きが制限されることで歩き方が変化し、腰や膝への負担が増えることもあります。
股関節の変形が進行すると、脚の長さに差が生じたり、体のバランスが崩れたりすることがあります。特に進行した段階では、安静にしていても痛みを感じることがあり、歩行や日常生活に大きな影響を与える疾患です。
変形性股関節症の原因は
変形性股関節症は原発性(一次性)変形性股関節症と続発性(二次性)変形性股関節症に大きく分けられます。
明らかな原因が指摘できないものが原発性変形性股関節症と言われます。日本人の特に女性に多いのが続発性変形性股関節症です。変形性股関節症は以下の要因が関与することがあります。
股関節の形態異常(臼蓋形成不全など)
股関節は、大腿骨頭を受け止める寛骨臼によって支えられています。寛骨臼の被りが浅い「臼蓋形成不全」があると、股関節にかかる負担が集中しやすくなり、軟骨が摩耗しやすくなります。日本では、変形性股関節症の原因として比較的多くみられます。
FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)
FAIとは、大腿骨頭や寛骨臼の形態の異常により、股関節を動かした際に骨同士が衝突してしまう状態です。この衝突が繰り返されることで股関節唇や関節軟骨が損傷し、将来的に変形性股関節症へ進行することがあります。特にスポーツ活動の多い方や若年者にみられることがあります。
股関節唇損傷
股関節唇は、股関節の安定性を高め、関節にかかる衝撃を吸収する役割があります。この股関節唇が損傷すると、股関節の安定性が低下し、関節軟骨への負担が増加します。股関節唇損傷は、FAIや股関節の形態異常、外傷などが原因となり、変形性股関節症の発症や進行に関与することがあります。
過去の怪我や外傷
股関節周囲の骨折や脱臼、スポーツによる関節損傷などがあると、股関節に負担がかかりやすくなり、軟骨のすり減りを引き起こすことがあります。
肥満
体重が増えると股関節にかかる負担が増加します。そのため、軟骨の摩耗が進みやすくなり、変形性股関節症の発症や進行に関与することがあります。
股関節への負担が大きい動作やスポーツ
長時間の立ち仕事や重い物を持つ作業、サッカーやランニングなど股関節に繰り返し負担がかかる活動も、股関節の摩耗を進める要因となることがあります。
遺伝的要因
家族に変形性股関節症の人が多い場合、股関節の形態や体質が似ることで、発症しやすくなる可能性があります。
変形性股関節症の診断方法
変形性股関節症の診断は、患者さんの病歴、年齢、診察所見、画像検査などを総合的に判断して行います。
レントゲン検査
股関節の変形や軟骨の摩耗、骨棘(こつきょく)などを評価するために、レントゲンが一般的に使用されます。これにより、股関節の状態を確認することができます。
一般的に「病期分類(進行度)」を使用して、変形性股関節症の進行度を評価します。レントゲン写真を基に、関節の変形の程度を以下の4段階で示します。 病期が進行するほど股関節の変形が進んでおり、痛みが強くなる傾向があります。
- 前期: 軟骨の厚さは保たれていますが、股関節の屋根にあたる骨のかぶりが浅い(臼蓋形成不全)など、将来的に変形が起きやすい状態です。
- 初期: 関節の隙間が少し狭くなり、軟骨の摩耗が始まっています。部分的に骨が硬くなる変化(骨硬化)が見られることもあります。
- 進行期: 軟骨がさらに摩耗し、関節の隙間が明らかに狭くなります。骨棘や骨嚢胞(骨の空洞)などの変形が現れます。
- 末期: 軟骨がほとんど消失し、関節の隙間がなくなります。骨同士が直接ぶつかり、変形や機能制限が著しい状態です。

MRI検査
レントゲンでの評価が難しい場合や、骨以外の問題(関節唇損傷、関節周囲の筋肉や靭帯の損傷など)が考えられる場合、MRIを使用して軟骨や関節唇の状態を確認します。
診断が確定した後、患者さんの症状の進行具合に応じて、治療方針が決定されます。
変形性股関節症の治療方法
治療方法は、股関節の軟骨のすり減りや骨の変形の程度、患者さんの年齢、生活習慣を考慮して決定されます。 基本的には、初期段階であれば保存的治療(手術を伴わない治療)を行いますが、進行した場合には手術が必要となることもあります。
保存的治療
- 投薬: 痛みを軽減するために、消炎鎮痛薬を使用します。湿布や塗り薬などの外用薬を併用することもあります。
- リハビリテーション: 股関節周囲の筋肉(特にお尻や太ももの筋肉)を強化し、関節への負担を減らすことが重要です。理学療法士による運動療法(ストレッチや筋力トレーニング、歩行指導)が行われます。
手術加療
- 骨切り術(寛骨臼回転骨切り術など): 股関節の変形が初期で、比較的年齢が若い患者さんに適応されることがあります。自分の骨を切り、関節の適合性を高めることで進行を防ぎます。
- 人工股関節置換術: 股関節の変形が進行し、痛みで歩行や日常生活が困難な場合に行う手術です。すり減った関節を人工の関節に置き換えることで、痛みの改善と関節機能の回復を図ります。
変形性膝関節症の予防と管理
変形性股関節症を予防するためには、日常生活で股関節に負担をかけないよう心がけることが重要です。
特に、股関節に過度な負荷をかけないよう、体重管理を行うことが大切です。定期的な運動や、股関節周りの筋肉を強化することも予防に繋がります。
また、股関節に不調を感じた場合は早期に適切な対応をすることが、進行を遅らせるために重要です。