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変形性股関節症の手術のタイミングについて

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こんにちは副院長の佐藤です。

前回の内容と重複する部分はあるのですが、こちらもよく聞かれるいつ手術をするべきか?の疑問に少しでも応えられればと思い現在の考えをまとめました。

 

変形性股関節症の手術タイミングについて

一言で言えば、手術の適切なタイミングは「患者様が必要と感じたとき」です。変形性股関節症はレントゲン画像で前期、初期、進行期、末期のステージに分類できますが、患者様の感じる不自由さは必ずしもステージと一致しません。

例えば、初期段階でも痛みが強く、日常生活に支障をきたしている方もいれば、末期であっても痛みをほとんど感じず、年に一度のレントゲン検査に元気に来院される患者様もいらっしゃいます。このため、手術の必要性はステージに基づくだけでなく、患者様ご自身の生活の質や感じている痛みに大きく依存します。

手術タイミングを考える上で重要なポイント

大切なのは、「手術のタイミングを逃したことにより、不可逆的な変化が起こっていないか」という点です。具体的には、手術を遅らせたことにより「もしあの時手術をしていれば」と後悔することがないかを確認することが重要です。

関節の可動域制限と手術の影響

もう一つの重要な要素は関節の「硬さ」です。変形性股関節症が進行すると、骨棘(骨のとげ)が出現し、インピンジメント(骨同士の接触)によって関節の可動域が制限されることがあります。このような制限は、関節を動かす際の痛みを避けようとする反応でも起こります。その結果、周囲の筋肉や腱、靱帯といった軟部組織が固くなっていまいます。

人工股関節手術によって関節の可動域は劇的に改善されますが、固くなった筋肉や腱、靭帯といった軟部組織を柔らかくすることや硬さを改善するために全部切離することは困難です。そのような場合、術後も可動域制限が残る可能性があり、特に術前の関節可動域が狭い患者様ではその傾向が強いです。そのため、手術のタイミングを考える際には、早めに対応することで術後の可動域を維持できる可能性が高まると言えます。

急速破壊型関節症のリスク

変形性股関節症で注意すべき不可逆的な現象の一つに、「急速破壊型関節症」があります。これは数週間から数ヶ月で骨の破壊が急速に進行し、人工関節を設置するための骨の土台が失われるリスクがある病態です。急速破壊型関節症は特有のレントゲンやCT画像で診断されるため、これが確認された場合、比較的早い段階で手術を勧めることが多いです。多くの患者様は強い痛みを自覚するため、そのような痛みがある場合は早期受診が不可欠です。手遅れになると、骨破壊が進行し、通常の手術方法では対応できず、特別な再建術を必要とする場合もあります。

健康寿命を意識した決断

さらに重要なのは、「健康寿命」を意識することです。あと何年、旅行や運動など、やりたいことができるかを考えてみてください。90代でアクティブな方もいらっしゃいますが、多くの方がそうではないでしょう。40代や50代で痛みを我慢して運動、移動を控えている方が、何もせず70代80代で元気に運動している確率は高く無いと言えます。動ける年代で動くと言うことはとても重要です。

私は、「痛みを理由に行動を変えているか」を患者様に尋ねています。本来の生活や活動を痛みによって制限されている場合、一度ブロック注射などで痛みを軽減させ、痛みのない状態を体験していただくことをお勧めしています。その経験を基に、患者様ご自身がどのような生活を送りたいか、理想の姿を描き、それを医師に共有していただくことが重要だと考えています。

結論として

変形性股関節症の手術は、痛みや生活の質を考慮し、患者様がその必要性を感じたときが最適なタイミングです。遅すぎると良い結果を得られないことがありますので、症状や生活の変化に気を配り、医師と十分に相談して決断していただきたいと考えております。

秋の気配が漂い始める季節の変わり目、どうぞご自愛ください。

変形性股関節症の手術適応について

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副院長の佐藤です。
開院から一年が経ち、おかげさまで100件を超える手術を担当させていただきました。これもひとえに信頼してくれた患者様、サポートしてくれるスタッフの皆様のおかげです。心より感謝申し上げます。

今回は、よく外来でお話しする「手術適応」について、ブログの形でまとめました。手術を検討している患者様に少しでも参考になったら幸いです。

手術が必要か?変形性股関節症の悩み

変形性股関節症と診断された患者様の多くは、「自分は手術を受けるべきか?」という疑問を抱いています。治療法には、主に薬物療法、理学療法、そして手術療法がありますが、クリニックに来られる患者様がすぐに手術を選ぶことはまれです。

悩まれている患者様に対して外来では、患者様に「手術をした場合」と「しなかった場合」のベストケースとワーストケースをお話ししています。

手術をした場合の見通し

人工股関節置換術は、20世紀における最も成功した手術の一つと言われており、非常に高い成功率を誇ります。手術の翌日から全荷重でリハビリを開始し、通常1週間ほどで退院できる状態になります。重労働でなければ、1か月程度で職場復帰する患者様もいますし、最近は入院中からリモートワークに復帰される方もいらっしゃいます。

術後の経過が順調であれば、人工股関節が体に馴染み、違和感なく日常生活を送れることが期待できます。スポーツへの復帰も可能で、ゴルフやテニスを楽しまれる方も多いです。

しかし、ワーストケースとしては、術後感染症を発症し、再入院や再手術が必要となる場合があります。稀に、人工関節を除去し、再挿入が不可能なケースもあります。また、術後の骨折や人工関節の緩みなどで再置換術が必要となることも考えられます。

手術をしなかった場合の見通し

手術をしない場合のベストケースは、今は痛みがあるものの、将来的に痛みが軽減し、日常生活に支障なく過ごせる可能性があることです。関節の可動域は制限されるかもしれませんが、それでも大きな不便を感じない場合もあります。

一方、ワーストケースとしては、急速破壊型股関節症などで骨の破壊が進行し、歩行困難や車椅子が必要となる可能性があります。その場合、手術を受けようとしても、骨の損傷が大きく、侵襲性の高い手術が必要になることもあります。

確率を見据えて

大切なのは、これらのケースが起こる確率です。確率は患者様によって異なります。医師としては、患者様に悪い結果を期待して治療を進めることはありませんが、結果には幅があることを認識しています。術後に全く痛みを感じない方もいれば、数年後に痛みが再発する方もいらっしゃいます。これらの可能性を考慮しつつ、手術のインフォームドコンセントを行うよう努めています。

手術適応の基準

変形性股関節症の絶対的な手術適応は、非常に限られた範囲です。保存治療でのワーストケースを想定される場合、手術を強く勧めることがあります。変形性股関節症は癌のように直接命に関わるものではないため、通常は手術の急を要することはありません。ただし、手術を待つことで、将来の手術がより困難になる場合は、早めに手術をお勧めすることがあります。

一方、相対的な手術適応は幅広く、初期の股関節症でも耐えがたい痛みで日常生活に支障がある場合は手術を考慮します。末期の股関節症でも、患者様が日常生活に困っていない場合は、手術を勧めることはほとんどありません。

患者様との対話が鍵

結局のところ、患者様がどのような経過を辿るかを予測し、どのような生活を望んでいるかを伺いながら、最良の選択を共に決めていくことが、手術適応を決める大切な基準だと感じています。不安や迷いがあれば、ぜひ担当医にご相談ください。意思決定のお手伝いができれば幸いです。

東京整形外科ひざ・こかんせつクリニック
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