スポーツで膝をひねった後、レントゲンで異常なし-ACL損傷・半月板損傷を見逃さないために-
目次
Toggleスポーツで膝をひねった後、レントゲンで異常なし-ACL損傷・半月板損傷を見逃さないために-
こんにちは。東京整形外科ひざ・こかんせつクリニックの渡部です。
寒い季節がやっと終わり、春の訪れを感じますね。暖かくなると運動をまた始めてみよう、新年度で新しいスポーツをやってみようかと考える方もいらっしゃるかと思います。
そこで今回は、スポーツ中に膝をひねってしまった後などに整形外科を受診し、「レントゲンでは異常ありません」と言われても、まだ安心できない理由について、できるだけわかりやすく解説します。
レントゲンはとても大切な検査ですが、前十字靱帯(ACL)損傷や半月板損傷の診断をレントゲンだけで完結させるのは難しく、MRIやエコー、そして経験のあるスポーツ整形外科医の診察が重要になります。
レントゲンでわかること・わからないこと
膝をひねってしまったあと、まずレントゲンを撮ること自体はとても大切です。骨折(剥離骨折を含む)を見逃さないために必要だからです(もちろん、受傷早期ではレントゲンで診断のできない骨折が隠れていることもあります)。
ですが、レントゲンで主にわかるのは「骨」の異常であり、半月板そのものや前十字靭帯の断裂、軟骨の損傷、骨挫傷や骨髄浮腫(内部へのダメージ)までは十分に評価できません。ACR(アメリカリウマチ学会)の急性膝外傷ガイドラインでも、レントゲンで骨折がなければ、疑われる半月板・靱帯損傷の評価にはMRIが適しているとされています。
当院でも、レントゲンで骨の異常の有無を確認したうえで、さらなる精査のためMRIやエコーを組み合わせることをご案内することがあります。
つまり、「レントゲンが正常=膝の中も正常」ではないのです。
MRIが必要になる理由
前十字靭帯(ACL)損傷や半月板損傷を詳しくみるうえで、もっとも重要な追加検査はMRIです。
Phelanらのメタ解析では、MRIの診断精度はACL損傷で感度87%・特異度93%、内側半月板損傷で感度89%・特異度88%と、全体として高い精度が示されました。MRIでは、レントゲンでは見えない靱帯、半月板、軟骨、関節液、骨髄病変まで評価できるため、膝の「中で何が起きているか」を把握するうえで非常に有用です。
ただし、MRIも万能ではありません。Kimらは、ACL損傷を伴う膝では、半月板損傷の「種類」や「部位」の判定精度がACL損傷のない膝よりも低下すると報告しています。つまり、MRIを撮れば自動的にすべてがわかるわけではなく、画像をどう読むか、症状とどう結びつけるかが大切です。
MRIは強力な検査ですが、診察とセットで初めて本当の価値を発揮します。
エコーが役立つ場面
エコー(超音波)はMRIの代わりになる検査、というよりも、MRIを補う検査として考えるとわかりやすいです。
関節液の有無、内側側副靱帯などの靱帯、膝蓋腱や周囲の筋腱、さらに半月板が関節外へはみ出す「逸脱」などを、その場で動かしながら評価できるのがエコーの大きな強みです。そのため、当院でもエコーでの確認をご案内することは少なくありません。
一方で、エコーには限界もあります。深い部分の関節内病変はMRIほど広く見ることができないため、前十字靭帯損傷などの評価には適しません。
つまり、エコーはMRIに補完する検査と考えるのが妥当です。
経験のあるスポーツ整形外科医の診察が大切な理由
前十字靭帯(ACL)損傷や半月板損傷は、画像だけで診断するものではありません。
受傷機転、腫れ方、膝の不安定感、可動域制限、関節裂隙の圧痛、引っかかりの有無などを、診察で総合して判断します。Sokalらのメタ解析では、ACLのLachman testの感度・特異度は81%・85%、pivot shift testは55%・94%でした。半月板損傷でも、Hegedusらのメタ解析ではMcMurray testは70%・71%、関節裂隙圧痛は63%・77%で、どの徒手検査も1つだけで確定できるほど完璧ではありません。だからこそ、複数の所見を組み合わせて診察する経験の積み重ねが重要になります。
さらに、誰が診るかで診断の質は変わります。 Geraetsらは、ACL断裂に対し、病歴と身体診察を組み合わせた正診率が整形外科医では94%、プライマリケア医では62%だったと報告しています。Kocabeyらも、スポーツ医学の訓練を受けた整形外科医の臨床診断は、ACL損傷や半月板損傷においてMRIと同等の精度だったと報告しました。スポーツ外傷に慣れた整形外科医の診察は、MRIの前にも後にも大きな意味があります。
当院で大切にしていること
東京整形外科ひざ・こかんせつクリニックでは、半月板損傷や前十字靱帯損傷などの膝スポーツ外傷にも対応しております。
膝のスポーツ外傷では、検査を「たくさんする」ことが大切なのではなく、必要な検査を、必要な順番で行い、適切な担当医が診察することが大切です。「レントゲンで異常がありません」だけで終わらせず、MRIやエコーを適切に使い分け、診察所見とあわせて判断することが、正確な診断とその先の治療方針につながります。
まとめ
スポーツで膝をひねったときは、
・ レントゲンだけでは前十字靭帯(ACL)損傷や半月板損傷を十分に評価できないことがある
・ MRIは非常に有用だが、画像だけでは完結できない
・ エコーは表層構造や動的評価に強い
・ 最後は経験のあるスポーツ整形外科医の診察と組み合わせることが重要
という点を知っておいていただきたいと思います。膝をひねったあとに痛みや腫れが続く方、引っかかり感や不安定感がある方、早く競技復帰したい方は、レントゲンだけで判断せず、一度専門的な評価を受けることをおすすめします。
参考文献
1. Taljanovic MS, et al. ACR Appropriateness Criteria® Acute Trauma to the Knee. J Am Coll Radiol. 2020.
2. Phelan N, Rowland P, Galvin R, O'Byrne JM. A systematic review and meta-analysis of the diagnostic accuracy of MRI for suspected ACL and meniscal tears of the knee. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2016.
3. Kim SH, Lee HJ, Jang YH, Chun KJ, Park YB. Diagnostic Accuracy of Magnetic Resonance Imaging in the Detection of Type and Location of Meniscus Tears: Comparison with Arthroscopic Findings. J Clin Med. 2021.
4. De Maeseneer M, et al. Ultrasound of the knee with emphasis on the detailed anatomy of anterior, medial, and lateral structures. Skeletal Radiol. 2014.
5. Pandya S, et al. Evaluation of the knee joint with ultrasound and magnetic resonance imaging. Semin Musculoskelet Radiol. 2023.
6. Johnson SE, Kruse RC. The Role of Ultrasound in the Diagnosis and Treatment of Meniscal Injuries. Curr Rev Musculoskelet Med. 2024.
7. Sokal PA, et al. The diagnostic accuracy of clinical tests for anterior cruciate ligament tears are comparable but the Lachman test has been previously overestimated: a systematic review and meta-analysis. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2022.
8. Hegedus EJ, et al. Physical examination tests for assessing a torn meniscus in the knee: a systematic review with meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2007.
9. Geraets SEW, et al. Diagnostic value of medical history and physical examination of anterior cruciate ligament injury: comparison between primary care physician and orthopaedic surgeon. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2015.
10. Kocabey Y, et al. The value of clinical examination versus magnetic resonance imaging in the diagnosis of meniscal tears and anterior cruciate ligament rupture. Arthroscopy. 2004.
東京整形外科ひざ・こかんせつクリニックは、
ひざ・股関節でお困りの方が、再び自分らしい生活を取り戻すためのパートナーでありたいと考えています。
当院では、レントゲンだけで判断せず、丁寧な診察とリハビリ評価を通じて、痛みの根本にアプローチしています。
「原因がわからない」「どこに行っても改善しない」と感じている方も、どうぞ一度ご相談ください。
渡部直人 専門分野 膝・股関節・骨粗鬆症

日本整形外科学会専門医、日本骨粗鬆症学会認定医、医学博士
ひざや股関節が痛くて来院された方が診察と検査を通じて痛みの原因を特定し、正しい治療を経て痛くないひざ、股関節を取り戻す手助けをさせていただきたいと思っています。