ビタミンD欠乏と日焼け止めの関係(骨粗鬆症関連)
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Toggle日焼け止めでビタミンD不足?骨粗鬆症は大丈夫?—肌も骨も守るちょうどいい対策
こんにちは、副院長の渡部です。春が待ち遠しい季節ですね。花粉症でお辛い方も多いのではないでしょうか。
外来で骨粗鬆症の診断になり、血液検査を行ったところビタミンDが欠乏していることが分かった際、
「日焼け止めをしすぎて、ビタミンDが作れなくなって骨粗鬆症になったのかしら?」
「日焼け止めをあまり使わないで太陽に当たったほうが良いのかな?」
などの質問をいただくことがあります。
結論から言うと、日焼け止めは続けてOKです。
紫外線はシミ・しわ(光老化)だけでなく、皮膚がんのリスクにも関わるため、紫外線対策はとても大切です。
一方で、生活スタイルによってはビタミンD不足が起こりやすくなるのも事実です。
今回は、世界の医学研究やガイドラインをもとに、「日焼け止め」・「ビタミンD」・「骨粗鬆症」の関係をまとめます。
そもそもビタミンDは、骨にどう関係する?
ビタミンDは、腸からのカルシウム吸収を助ける役割があります。
ビタミンDが不足するとカルシウムを取り込みにくくなり、体は血中カルシウムを保つために骨からカルシウムを動員しやすくなります。これが長期的に続くと、骨密度低下(骨粗鬆症)や骨折リスクにつながり得ます。
ビタミンDは食事からも摂れますが、実は大きな供給源は皮膚での産生です。紫外線(主にUVB)により皮膚でビタミンDが合成されます。
日焼け止めはビタミンDを減らす?「理論」と「現実」は少し違う
日焼け止めは紫外線(UVB)をブロックするため、理屈の上では「ビタミンDが作られにくくなる」可能性があります。
ただし、現実の生活では
・ 推奨量ほど十分に塗れていない
・ 塗りムラがある
・ 汗・摩擦で落ちる
・ 屋外滞在時間や服装が人により大きく違う
といった要素が大きく、「日焼け止め=必ずビタミンD不足」とは言い切れません。
実際、2019年のレビューでは、現実的な使用状況では日焼け止めが血中25(OH)D(ビタミンDの指標)を大きく下げる強い根拠は限られる、と整理されています(ただし、高SPFを規定量で毎日という条件の研究は十分ではない点も指摘されています)。
近年は注意:高SPFを毎日しっかり使う人はビタミンD不足が起こり得る
最近は、SPFが高い日焼け止めを「毎日」「顔や首にしっかり」使う方が増えました。
2025年の研究では、高SPFの日焼け止めを日常的に使用する条件で、1年後にビタミンD欠乏のリスクが増えたという報告があります(血中ビタミンDの濃度に有意差はあるものの、わずかなものであることに注意が必要ですが)。
しかし、これはイギリスでの研究報告で、食事・サプリの状況や日光曝露の程度で影響は変わり得るため、この結果を私たちの住む日本の話に直結させることは論理の飛躍になります。
また、2025年のメタ解析でも「日焼け止め使用が25(OH)Dを下げ得る」ことが示唆されつつ、その低下が骨折などの臨床的に重要な結果に直結するかは、まだ結論が十分ではないとまとめられています。
つまり、ここで大事なのは
「日焼け止めをやめる」ことではなく、ビタミンD不足にならない生活設計をすること
です。
日光対策をしても、骨密度が必ず下がるわけではない
日傘・長袖・日焼け止めなどの「日光防御行動」と骨密度の関係を検討した研究では、日光防御の習慣が骨密度低下や骨粗鬆症リスク増加と明確に結びつかないという報告もあります(横断研究で限界はあります)。
少なくとも、「紫外線対策=骨が弱くなる」と短絡的に考える必要はありません。
当院の考え方:日焼け止めは継続+骨のための対策を足す
① ビタミンD不足になりやすい方は要注意
次に当てはまる方は、日焼け止めの影響が出やすい(あるいは、そもそも不足しやすい)可能性があります。
・ 屋外に出る時間が少ない(在宅中心、デスクワーク中心)
・ 365日しっかり日焼け止め+長袖・日傘などで肌の露出が少ない
・ 高齢、やせ型
・ 胃腸の病気、腎機能低下などがある
・ 骨粗鬆症治療中/骨折歴がある
・ 以前の採血でビタミンDが低いと言われたことがある
この場合は、「日焼け止めを塗る・塗らない」よりも、ビタミンDをどう確保するかが重要です。
② 食事で土台を作る
ビタミンDは、魚(鮭・サバ・イワシなど)、きのこ(干ししいたけなど)が代表的です。
「日光で作る」以外のルートを太くしておくと、季節や生活スタイルに左右されにくくなります。
しかし、それでもビタミンDにばかり囚われて食事の楽しみが失われてしまっては本末転倒ですよね。
③ 必要な方は検査と補充を合理的に
2024年の内分泌学会のガイドラインでは、ビタミンDを「誰でも大量に」といった方向ではなく、必要性の高い方に検査・補充を合理的にという意見になっています。
骨粗鬆症の治療中、骨折リスクが高い、日光に当たる機会が少ないなどの場合は、医師と相談して血中ビタミンD測定や補充(サプリ等)を検討するのが現実的です。
まとめ
・ 日焼け止めは肌を守るために大切(続けてOK)
・ ただし、生活スタイルによってはビタミンD不足が起こり得る(高SPFを毎日しっかり使う場合など)
・ 「日焼け止めをやめる」ではなく、食事・必要なら検査や補充で骨のリスクを下げるのが最適解
骨粗鬆症や骨折予防は「骨密度だけ」ではなく、栄養・筋力・転倒予防まで含めた総合戦略が重要です。
気になる方は、骨密度検査の結果とあわせてビタミンDも含めて一緒に設計していきましょう。
参考文献
1.Demay MB, et al. Vitamin D for the Prevention of Disease: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2024.
2.Tran V, et al. Effect of daily sunscreen application on vitamin D: findings from the open-label randomized controlled Sun-D Trial. Br J Dermatol. 2025.