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変形性膝関節症の進行度とKellgren-Lawrence分類

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今回のkey point

変形性膝関節症の重症度分類として、Kellgren-Lawrence分類が用いられる
Kellgren-Lawrence分類はグレード0~4の5段階で分類する
グレード2以上は変形性膝関節症と診断される

変形性膝関節症の進行度とKellgren-Lawrence分類をやさしく解説

変形性膝関節症は、膝関節のクッションである軟骨がすり減り、関節の骨の縁にトゲのような骨棘(こつきょく、骨のトゲ)ができて膝に痛みが出る病気です。
中高年以降の方に多くみられ、特に女性に多い傾向があります。
初めのうちは膝に違和感を覚えたり軽い痛みを感じる程度ですが、進行すると歩くときや階段の上り下り、正座をするときに痛みが出る場合があります。
さらに重症になると膝の変形が目立ち、歩行が困難になるなど日常生活にも大きな支障が生じることがあります。
こうした膝の痛みは徐々に進行するため、患者さん自身が「今どのくらい進んでいるのか」を理解することが大切です。
その指標として整形外科でよく使われるのが、Kellgren-Lawrence分類(ケルグレン・ローレンス分類、略してKL分類)と呼ばれる重症度の分類法です。

Kellgren-Lawrence分類とは

Kellgren-Lawrence分類(KL分類)は、膝のレントゲン写真(X線画像)をもとに変形性膝関節症の進行度(重症度)を5段階で評価する方法です。
具体的には、関節軟骨のすり減り具合(関節の隙間の狭さ)と骨棘の出来具合によってグレード0~4に分類されます。
グレードは関節のすき間(関節裂隙)の広さによって1から4まで評価され、グレード2以上に該当すると変形性膝関節症と診断されます。
なぜ関節のすき間を見るかというと、この部分に軟骨があり、軟骨がすり減って隙間が狭くなることが進行を示すからです。
レントゲンでは軟骨そのものは写りませんが、軟骨が薄くなると骨と骨の間の隙間が狭く見え、軟骨の減少を間接的に判断できます。
また、軟骨が減って骨同士が擦れ始めると骨の端に余分な骨(骨棘)が形成され、X線写真ではそれが白い突起として映ります。
これらの所見によって膝関節の変化を評価するのがKL分類です。

KL分類のグレードは0から4までの5段階です(グレード0は異常なし、4が最も重度)。
以下ではグレード0~4の各段階について、レントゲン画像での特徴と症状、日常生活への影響や注意点をわかりやすく説明します。

Kellgren-Lawrence分類の各段階

グレード0:正常な膝関節

グレード0は正常な膝関節の状態です。レントゲン画像では太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)の間にしっかりと隙間があり、骨と骨の間の空間が十分に保たれています。
骨の端も滑らかで、後述するような白っぽい骨の増殖(骨の硬化像)や骨棘は見られません。
軟骨が健康な厚みを保っており、衝撃を吸収するクッション機能が十分に働いている状態です。

この段階では痛みや症状はほとんどありません
加齢や膝への負担が今後軟骨をすり減らす可能性があるため、普段から膝に優しい生活を心がけることが大切です。
例えば適度な運動で太ももの筋肉を鍛えたり、膝に過度な負担をかけないように体重管理をしたりすると、将来の変形性膝関節症の予防につながります。

グレード1:ごく初期の変化

グレード1は、変形性膝関節症のごく初期の段階です。レントゲンでは骨と骨の隙間がわずかに狭くなっているように見える場合がありますが、まだ大きな変化はありません
骨の端にごく小さな骨棘(骨のとげ)が現れたり、軟骨の下の骨が少し厚く硬くなって白っぽく見えたり(骨硬化)することがあります。
しかし、全体的には正常に近い画像所見です。

グレード1の段階では、多くの場合自覚症状はほとんどないか、あっても軽い違和感程度です。
軟骨には神経がほとんど通っていないため、多少すり減っても痛みを感じにくいことも関係しています。
そのためこの時期の変化は本人には気づかれないことも多いです。
膝に軽い違和感を覚える場合でも、「年のせいかな」程度で見過ごされることが少なくありません。
ただ、この段階から膝をいたわる習慣を持つことが大切です。
例えば長時間の正座や深くしゃがみ込む動作は避け、無理のない範囲で太ももの筋力トレーニングを始めることがおすすめです。
また、体重が増えすぎないよう管理することで膝への負担を減らすことができます。
グレード1はまだ正常に近い状態とはいえ、将来に向けて予防を意識する段階と言えます。

グレード2:(軽度の変形・早期膝OA)に潜む、半月板のトラブルとは?

グレード2になると、変形性膝関節症と診断される段階になります。レントゲン画像では明らかな骨棘(骨のとげ)が認められ、骨と骨の隙間もやや狭くなってきています。

しかし実は、レントゲンでは見えない“膝の内部の重要な変化”が起きていることも少なくないです。

内側半月板(膝の内側のクッション)の「後ろが切れている可能性も」?

膝の中には「半月板(はんげつばん)」というクッションがあり、骨と骨の間で衝撃を和らげる役割をしています。
そのうち、「内側半月板」は特に体重がよくかかる場所にありますが、その後ろの根元(=“後根”と呼ばれます)が切れてしまうことがあります。これを「内側半月板後根断裂(こうこんだんれつ)」といいます。

▶ クッションが効かなくなると、何が起きる?

この後根が切れてしまうと、半月板は本来の位置からズレてしまい、クッションとしての役割を果たせなくなります。

その結果、膝の軟骨にかかる圧力が強まり、初期の段階でも膝の痛みが強く出たり変形が急に進んだりすることがあります。
「後根断裂があると、膝の軟骨が傷むスピードが一気に加速する」とも報告されています。

内側半月板の“ずれ”も要注意!

もうひとつ重要なのが、半月板の“逸脱”です。

これは、半月板が本来あるべき場所から押し出されてしまい、膝の中でうまく機能できなくなる状態です。

▶ 3ミリ以上ずれていたら要警戒!

MRI(磁気共鳴画像)や超音波で詳しく調べると、立っているときや歩いているときに半月板が3ミリ以上ずれている方は、膝の痛みが強く出やすく、軟骨の下の骨に異常(骨髄のむくみ)が起きていることもあると報告されています。

さらに、早期のOA患者さんの膝を調べたところ、体重がかかる場面でこの“ずれ”が大きくなっているケースが多かったという結果も出ています。

この“逸脱”があると、膝の内側の痛みぐらつき、さらには歩行バランスの悪化につながるため、「グレード2だから大したことない」と安心せず、必要に応じてMRI検査を受けることも大切です。

グレード2でも油断は禁物であり、「まだ初期の段階だから大丈夫」と思いがちなグレード2ですが、
今回ご紹介したように、

  • 半月板の後根断裂

  • 半月板の逸脱(3mm以上)

といった“隠れた異常”があると、レントゲンでは分からないレベルで関節が傷み始めていることもあります。

このようなトラブルは、MRIやエコー検査などで詳しく見ることで初めてわかるケースが多く、早期発見・早期対処が症状の進行を防ぐカギになります。

症状としては、長く歩いた後や、椅子から立ち上がるとき・歩き始めの一歩目に膝が痛むことが出てきます。
日常生活では「少し膝がこわばる」「動き始めに膝が痛い」と感じる程度で、休めば痛みが引くことも多いです。階段の上り下りで違和感を覚えることもあるかもしれません。
軟骨や骨の変形は自然には元に戻りませんが、太ももの筋力トレーニングや体重コントロール、痛み止めの使用や関節注射などの保存療法によって症状の進行を遅らせることが期待できます。
痛みが強いときは無理をせず休む、膝にサポーターを巻いて安定させるといった工夫も有効です。

グレード3:中等度の変形(進行期)

グレード3は変形性膝関節症の中期(進行期)にあたります。レントゲンでは骨と骨の隙間がさらに狭くなり、軟骨の大部分がすり減っていることがわかります。
複数の骨棘がはっきりと見えるようになり、骨の端が滑らかではなくデコボコした輪郭になります。
軟骨下骨(なんこつかこつ)という軟骨の直下にある骨が厚く硬くなり(硬化像)、X線写真で白く濃く映る部分も中等度に増えています。
この段階になると、骨同士の距離が縮まり関節が変形し始めていることが画像から読み取れます。
症状もこの頃から明らかに強くなります。
膝の曲げ伸ばしがスムーズにできず動かしにくくなったり
、歩行中の痛みが悪化して日常的に膝が痛むようになります。
階段の上り下り正座はかなり困難になり、無理に行うと強い痛みを感じます。
関節に炎症が起きやすくなるため、膝が腫れて熱を持つ(いわゆる「水がたまる」)ことも増えてきます。
グレード3では日常生活に支障が出るレベルの痛みや不自由さが出現するため、何らかの対策が必要です。
痛みが強い場合、消炎鎮痛剤(痛み止め)の服用ヒアルロン酸注射などの治療が検討されます。
また、杖の使用を始める方もいます。
杖は痛い膝と反対側の手で持ち、身体の重心を預けることで膝への負担を軽減できます。
最初は抵抗があるかもしれませんが、使ってみると膝がラクになり歩行が安定します。
さらに、膝専用のサポーターやインソール(靴の中敷き)を用いて関節の負担を減らす方法も効果的です。
グレード3は
日常生活の工夫やリハビリ治療が特に重要になる段階であり、必要に応じて手すりの設置など住環境の見直しも考えていきましょう。

グレード4:重度の変形(末期)

グレード4は変形性膝関節症が最も進行した末期の段階です。レントゲン画像では骨と骨の隙間がほとんど消失し、膝の軟骨はほぼ失われてしまっています。
骨同士が直接ぶつかり合っているため、骨の変形も著しく、関節の面が平坦になったりズレたりしています。骨棘もさらに大きく成長し、関節の周囲に大量のとげ状の骨の突起が写ります。
また軟骨下骨の硬化も強く、X線写真では骨が真っ白に濃く映る部分が増えています。
いわば膝関節の中身がすり減って骨だらけになってしまった状態です。

症状も最も重く、安静にしていても膝が痛む(安静時痛)ほか、夜間も痛みで眠れない(夜間痛)ことがあります
関節の可動域(曲げ伸ばしできる範囲)
も極端に制限され、膝が十分に曲がらない・伸ばせないため正座は極めて困難になります。
膝の変形が外見からも明らかになり、脚がO脚やX脚に曲がって見えることもあります
歩行は非常に困難となります。
この段階になると日常生活動作(立ち上がりや歩行、階段昇降など)のほとんどに支障を来たします。
グレード4では人工膝関節置換術(人工関節への置き換え手術)が検討されます。
手術によってすり減った関節を新しい人工の関節に置き換えれば痛みの大幅な軽減が期待できます。
手術に踏み切るかどうかは本人の希望や全身状態にもよりますが、この段階では主治医と相談して前向きに検討する価値があります。
また、手術を受けない場合でも痛み止めの薬や注射で痛みをコントロールしつつ、必要に応じて介護保険のサービスや福祉用具(手すりや歩行器、膝の装具など)を利用して生活の質を維持する工夫が大切です。

レントゲン検査と分類の役割

膝の痛みで整形外科を受診すると、まずレントゲン検査が行われるのが一般的です。
レントゲン写真からは骨の様子が分かり、前述したKL分類によって膝関節症の重症度がおおよそ判断できます。
実際にKL分類は変形性膝関節症の重症度判定に最も広く用いられている指標で、医療従事者が状態を共有したり経過を追ったりするのに役立ちます。
たとえば「右膝はKL分類グレード3」というように記録すれば、関節の隙間の狭さや骨棘の有無といった情報が端的に伝わります。
また、治療法を選択する際の目安にもなります。
一般にグレード0~1では保存療法(運動や生活指導)が中心、グレード2~3では薬物療法や注射、装具による補助などを組み合わせ、グレード4では手術も視野に入れるといった具合に、おおよその方針を立てる指針ともなります。

進行を遅らせるための日常の工夫

変形性膝関節症と上手につきあっていくには、日常生活で膝に負担をかけない工夫が欠かせません。
進行度に応じて必要な対策は増えますが、早い段階から次のようなポイントに気を付けることで、膝の悪化を防ぎ痛みを和らげる効果が期待できます。

  • 正座やしゃがみ込みを避け、椅子中心の生活にする:
    床に直接座る和式の生活よりも、椅子やベッドを使う洋式の生活に変えると膝への負担が減り、痛みの緩和が期待できます。立ち座り動作も楽になるため、膝に優しい習慣となります。

  • 膝に衝撃の大きい運動は控える:
    ジョギングや激しいジャンプなど膝関節に強い衝撃を与える運動は軟骨のすり減りを進めてしまいます。痛みがある時期は無理をせず、プールでのウォーキングや自転車こぎなど膝に負担をかけにくい運動を選びましょう。

  • 体重を減らして膝への荷重を軽減する:
    体重が重いとそれだけ膝にかかる負荷も大きくなります。実際、肥満の方は軟骨のすり減りが早く進む傾向があります。食事改善や運動による減量で膝の負担を和らげることができます。

  • 姿勢を良くして生活する:
    猫背や片側に体重をかけるクセは膝に偏った負担をかけます。背筋を伸ばし、左右バランスよく立つ・歩くように心がけるだけでも膝への衝撃を和らげる効果があります。特に杖を使う場合も、前かがみにならず姿勢良く歩くことで一層負担軽減になります。

  • 必要に応じて杖や手すりを利用する:
    痛みが強いときや長距離を歩くときは、無理せず杖の助けを借りましょう。杖を使えば痛む膝への荷重を大幅に減らすことができ、姿勢も安定して楽に歩行できるようになります。階段には手すりを設置すると昇り降りが安全になります。

  • 膝に合った靴を履く:
    クッション性の高い運動靴など、膝への衝撃を吸収してくれる靴を選びましょう。ヒールの高い靴は避け、足にフィットする安定した靴で歩くことが望ましいです。靴底がすり減って偏っている場合は買い替え時です。

以上のような日常生活の工夫は、どの段階の変形性膝関節症にも有効ですが、特に初期のうちから習慣にすることで進行を遅らせる効果が期待できます。また痛みがあると動かさなくなりがちですが、適度な運動で筋力を維持することも重要です。痛みと相談しながら無理のない範囲で続けてみましょう。

まとめ|変形性膝関節症とKL分類を理解して早めの対策を

変形性膝関節症は、年齢や膝への負担によって軟骨がすり減り、関節の変形や痛みを引き起こす病気です。
中高年の女性に多く、放置すると日常生活に支障をきたすこともあります。

こうした進行度を評価するために、整形外科ではKellgren-Lawrence分類(KL分類)が使われます。これはレントゲン画像をもとに、骨と骨の隙間の広さや骨棘の有無を見て、グレード0(正常)からグレード4(末期)までの5段階で膝の状態を分類する方法です。

グレード2以上が「変形性膝関節症」と診断される目安で、特にグレード2の段階では、半月板の損傷や逸脱といったレントゲンでは見えにくい異常が隠れていることもあります。そのため、痛みや違和感がある場合は、早めにMRIなどで詳しく調べることが大切です。

進行を防ぐには、膝に負担をかけない生活習慣が重要です。正座や深くしゃがむ動作を控え、体重管理や太ももの筋力強化を意識しましょう。膝の状態に応じて、サポーターや杖の使用も有効です。

膝に違和感を覚えたら、「まだ大丈夫」と思わず、是非当院への受診をお勧めいたします。

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