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臼蓋形成不全とは

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今回のkey point

臼蓋形成不全とは、受け皿である臼蓋が小さかったり、浅かったりして、しっかりとはまっていない状態
女性に多い
臼蓋形成不全の診断にはレントゲンが用いられる

はじめに

「歩くと股関節が痛む」「立ち上がるときに違和感がある」
そんな症状にお悩みではありませんか?

もしかすると、その痛みの背景には臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)という、股関節のかたちに関わる異常があるかもしれません。

この病気は、股関節にかかる負担が大きくなることで、関節のすり減り(変形性股関節症)を引き起こしやすくなるといわれています。特に日本人女性に多いとされており、早めの発見と対策がとても大切です。

この記事では、臼蓋形成不全のしくみや症状、検査方法、治療の選択肢について、わかりやすく解説していきます。

臼蓋形成不全ってなに?

股関節の基本構造

股関節は「ボールと受け皿」のような構造をしていて、太ももの骨(大腿骨頭)が、骨盤側のくぼみ(臼蓋)にすっぽりとはまり、滑らかに動く仕組みになっています。

「はまり」が浅い状態が臼蓋形成不全

臼蓋形成不全とは、この受け皿である臼蓋が小さかったり、浅かったりして、しっかりとはまっていない状態をいいます。

簡単に言えば、「股関節がしっかりとはまっておらず、ぐらつきやすい」状態です。これにより、関節にかかる負担が一部に集中し、軟骨や関節のふちにある“クッション”のような組織(関節唇)が傷つきやすくなるのです​。

どんな人に多いの?

  • 先天的に骨の形が小さい方

  • 女性(特に日本人女性)

  • 子どものころ「股関節脱臼」と診断されたことがある人

  • 若いころから股関節に違和感を感じていた人

実際、日本人の股関節のかたちは欧米人に比べて「浅め」で、臼蓋形成不全をもっている方が多いとされています​。

どんな症状が出るの?

初期の段階では無症状のこともありますが、次のような症状が見られることがあります。

  • 立ち上がるときや歩き始めに股関節が痛い

  • 階段の上り下りで違和感

  • 足の付け根で「コキッ」「パキッ」と音がする

  • 長時間歩くと疲れやすい

こうした症状がある場合、放っておくと関節のすり減り(変形性股関節症)へ進行してしまうことがあるため注意が必要です​。

どうやって診断するの?

臼蓋形成不全の診断は、X線(レントゲン)によって、股関節のかたちを角度で測ることで行われます。

よく使われる指標

  • CE角
     股関節がどのくらい被われているかを示す角度。
     20度以下だと臼蓋形成不全とされます。

  • Sharp角
     臼蓋の傾き具合を見る角度。45度以上だと異常の可能性あり。

  • ARO(寛骨臼屋根傾斜角)
     臼蓋の上面の傾き。15度以上が目安です。

また、立った状態と寝た状態でX線写真を比べると、骨盤の傾きによる違い(後捻や前捻)も分かりやすくなり、より正確な診断につながります​。

CT・MRI検査も有効

関節唇の損傷や軟骨の状態を詳しく見るにはMRI、立体的な形の把握にはCTも有効です。これらの画像で関節唇の損傷(裂け目)が見つかることもあります​。

放っておくとどうなるの?

臼蓋形成不全を放置していると、股関節のすり減りが徐々に進行していきます。

実際の症例では、最初は裂隙(関節のすきま)が保たれていても、10〜20年ほどの時間をかけて、軟骨がすり減り、骨と骨が直接ぶつかる状態へと悪化することがあります​。

早期に診断され、対策をとることで、将来の人工関節手術を防ぐことにもつながるのです。

どんな治療があるの?

1. 保存療法(手術以外の治療)

  • ストレッチ・筋力トレーニング(理学療法)

  • 体重コントロール

  • 痛み止めやヒアルロン酸の注射

軽症で、日常生活に支障が少ない場合は、このような治療で痛みを和らげ、進行を防ぐことが期待できます。

2. 手術療法(進行例や若年者)

股関節周囲骨切り術 (PAO:Periacetabular Osteotomy)

これは、臼蓋(受け皿)を回転させて、股関節のかぶさりを改善する手術です。

若年の方で関節が残っている場合、将来的な人工関節を回避する方法として注目されています。

Troelsenらの報告では、PAO手術を受けた患者の5年後の股関節温存率は90%以上という良好な結果が示されています​。

まとめ

  • 臼蓋形成不全は、股関節がしっかりとはまっていない構造異常で、関節に負担がかかりやすくなります。

  • 日本人、特に女性に多く、早期の診断と対策が重要です。

  • 放っておくと、変形性股関節症に進行することがありますが、早めに対応すれば手術を避けられる可能性もあります。

最後に

「ちょっとした違和感だから…」と我慢している股関節の痛み。
実は、骨の形の問題かもしれません。

気になる症状がある方は、ぜひ当院の診察でご相談ください。早期の一歩が、将来の股関節を守ります。

参考文献

・Troelsen A. Assessment of adult hip dysplasia and the outcome of surgical treatment. Dan Med J. 2012 Jun;59(6):B4450.
・Harris-Hayes M, Royer NK. Relationship of acetabular dysplasia and femoroacetabular impingement to hip osteoarthritis: a focused review. PM R. 2011 Nov;3(11):1055-1067.e1.

 

東京整形外科ひざ・こかんせつクリニック
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