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骨形成薬の使い分けと合併症・併用禁忌について(私見含む)

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あけましておめでとうございます。副院長の渡部です。

以前、ひざが痛い方や、股関節が痛い方にも半分程度の確率で骨粗鬆症(や骨量減少)が隠れており、治療に取り組んでおくことが必要だという内容について、私の自己紹介文ブログでも記載させていただきました。また、私が以前所属していた東京医科歯科大学(現、東京科学大学)でも上記内容についての研究を行ってまいりました。

近年、骨粗しょう症の治療における骨形成薬(骨を作る機能を増やす薬。現状、すべて注射製剤)の重要性が再認識され、世界で最も権威のある骨粗鬆症の学会の一つであるASBMRのポジションステートメント(この方針で行こう!という宣言)でもその優先度が高まり、最初に骨形成薬を使用すべき、すなわち「骨形成ファースト」の方針はコンセンサスとなってきております。

骨粗しょう症に対する治療法として、今までは骨吸収を抑制する薬剤(ビスホスホネート剤など)が広く用いられてきましたが、骨形成を促進する薬剤は、特に脆弱性骨折の高リスク患者さんに対して治療選択肢として注目されています。

本記事では、現在日本で使用されている代表的な骨形成薬であるイベニティ(romosozumab)テリボンオートインジェクター(teriparatide)オスタバロ(abaloparatide)テリパラチドBS(teriparatide biosimilar)について、それぞれの効果、使いやすさ、長所と短所、そして合併症や併用禁忌について解説します。


1. イベニティ(Romosozumab)

イベニティは、骨吸収を抑制しつつ骨形成を促進する作用を持つモノクローナル抗体です。骨吸収を促進するRANKL(Receptor Activator of Nuclear Factor Kappa-B Ligand)を抑制し、骨形成を促すスカベンジャー受容体(sclerostin)の抑制を介して骨の新陳代謝を調節します。

効果

イベニティは、特に脆弱性骨折に対する予防効果が強く、骨密度を増加させます。複数の臨床試験により、特に骨折の高リスク患者さんに対して優れた予防効果を示すことが確認されています。特に、大阪大学の蛯名耕介先生の論文で、治療歴のない骨粗しょう症患者さんの骨密度が治療歴のある方と比べ最も上昇することが示されており、初手で治療することで骨密度を大幅に上昇させる効果があります。一方、添付文書では、使用の条件として

 骨密度値が-2.5SD(YAM値70%)以下で1個以上の脆弱性骨折を有する

 腰椎骨密度が-3.3SD(YAM値60%)未満

 既存椎体骨折の数が2個以上

 既存椎体骨折の半定量評価法結果がグレード3

の条件のどれか一つを満たす必要があるとされています。(医師の裁量にある程度任されてはおりますが)

 

長所

 骨折リスクを大幅に低下させ、骨密度の急激な増加を示す。

 比較的短期間で効果が現れる。

短所

 月に1回の注射が必要。

・ 注射後の注射部位反応が報告されている。

 長期的な安全性に関するデータが少ない。

合併症および併用禁忌

 低カルシウム血症患者には禁忌。

 心筋梗塞や脳梗塞などの既往歴のある患者には慎重に使用すべきです。


2. テリボンオートインジェクター(Teriparatide)

テリボンオートインジェクター(テリパラチド)は、副甲状腺ホルモン(PTH)の一部を模倣したペプチドです。骨形成を促進し、骨密度を増加させるとともに、骨折予防にも寄与します。

効果

テリパラチドは骨密度を急激に増加させ、特に脊椎骨折に対する予防効果が強く示されています。骨形成を促進し、骨折リスクを低下させることが臨床試験で確認されています。

長所

 骨密度を劇的に増加させ、特に脊椎骨折に効果的。

 一部の患者では骨の質が改善される報告もあり。

・ 週に2回の投与でよく、自己注射製剤の中で最も使用が簡便

短所

・ 骨腫瘍のリスクが示唆されており、使用には制限がある。

・ 2年間以上の連続使用は制限されている。

合併症および併用禁忌

・ 高カルシウム血症のリスクがあるため、慎重に使用すべきです。

・ 骨腫瘍骨肉腫のリスクが高い患者さんには禁忌。

・ 妊娠中および授乳中の女性にも禁忌。


3. オスタバロ(Abaloparatide)

オスタバロ(アバロパラチド)は、テリパラチドに類似した作用を持つ骨形成薬で、骨形成を促進し、骨密度を増加させることができます。

効果

オスタバロは、テリパラチドと同様に骨密度を増加させ、脆弱性骨折の予防に効果的です。骨の質を改善し、骨折リスクを低下させることが臨床試験で確認されています。

長所

・ 骨密度の急激な増加を示し、脊椎骨折予防に効果的。大腿骨の骨密度をテリパラチドよりも上昇させる特徴がある。

・ 骨の質が改善される可能性があり、骨折リスクをさらに低減。

短所

・ 高カルシウム血症注射部位反応が見られることがある。

・ 骨腫瘍のリスクに関して、テリパラチドと同様に注意が必要。

・ 毎日投与する必要があり、手技はやや煩雑。

合併症および併用禁忌

・ 高カルシウム血症の患者さんには禁忌。

・ 骨腫瘍や骨肉腫のリスクがある患者さんには禁忌。

・ 妊娠中および授乳中の女性には禁忌。


4. テリパラチドBS(Teriparatide Biosimilar)

テリパラチドBSは、オリジナルのテリパラチドと同等の効果を持つバイオシミラー薬(後発医薬品)です。

効果

テリパラチドBSは、骨密度の増加および骨折予防においてオリジナルのテリパラチドと同様の効果を示します。特に高齢者や脆弱性の高い患者さんに対して有効です。

長所

・ コスト面で優れた選択肢となる。

・ オリジナルのテリパラチドと同等の効果が期待でき、骨密度の改善が見込める。

短所

・ 長期的なデータが不足している

・ 臨床使用経験が少ないため、慎重に使用するべきです。

・ 毎日投与する必要があり、手技はやや煩雑。

合併症および併用禁忌

・ 高カルシウム血症骨腫瘍のリスクがあり、注意が必要です。

・ 妊娠中および授乳中の女性には禁忌。

ざっくりとまとめますと、

イベニティ:使用条件を満たす重度の骨粗しょう症患者さん(特に未治療の方)

テリボンオートインジェクタ手技が簡便なことを望まれる方、比較的大腿骨の骨密度が保たれている方

オスタバロ大腿骨の骨密度が低く、こちらにもアプローチが望まれる方

テリパラチドBS:薬価を抑えたい方

の様な基準で使用しております。

もちろん、内服薬を含め、お一人お一人に最も最適な治療法を患者さんと相談しながら決めていくというスタイルで治療にあたらせていただいております。


まとめ

骨形成薬は、骨密度の増加と骨折予防において重要な役割を果たしますが、治療選択に際しては、合併症や併用禁忌を十分に考慮することが必要です。ASBMRのポジションステートメントによって、骨形成薬の優先度が高まった今、これらの薬剤は特に脆弱性骨折の高リスク患者さんに対して重要な治療法となっています。

イベニティ、テリボンオートインジェクター、オスタバロ、テリパラチドBSはそれぞれ異なる特徴を持ち、患者さんの状態やご希望に応じた使い分けが重要です。

参考文献:

1. Cummings, S. R., et al. (2018). Romosozumab treatment in postmenopausal women with osteoporosis. New England Journal of Medicine, 378(16), 1482-1492.

2. Neer, R. M., et al. (2001). Effect of parathyroid hormone (1-34) on fractures and bone mineral density in postmenopausal women with osteoporosis. New England Journal of Medicine, 344(19), 1434-1441.

3. Cosman, F., et al. (2016). Abaloparatide versus teriparatide for the treatment of osteoporosis. New England Journal of Medicine, 374(3), 174-181.

4. Finkelstein, J. S., et al. (2018). A study of the biosimilar teriparatide and its equivalence to branded teriparatide. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 103(6), 2497-2504.

5. Ebina K, et al. Effects of prior osteoporosis treatment on the treatment response of romosozumab followed by denosumab in patients with postmenopausal osteoporosis. Osteoporosis International. 2022;33(8):1807–1813. doi:10.1007/s00198-022-06386-y

 

東京整形外科ひざ・こかんせつクリニックは、
ひざ・股関節でお困りの方が、再び自分らしい生活を取り戻すためのパートナーでありたいと考えています。

当院では、レントゲンだけで判断せず、丁寧な診察とリハビリ評価を通じて、痛みの根本にアプローチしています。
「原因がわからない」「どこに行っても改善しない」と感じている方も、どうぞ一度ご相談ください。

渡部直人 専門分野 膝・股関節・骨粗鬆症

日本整形外科学会専門医、日本骨粗鬆症学会認定医、医学博士

ひざや股関節が痛くて来院された方が診察と検査を通じて痛みの原因を特定し、正しい治療を経て痛くないひざ、股関節を取り戻す手助けをさせていただきたいと思っています。

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