O脚(内反膝)とは?見た目の特徴から膝への影響・予防法
今回のkey point
O脚になると歩行時に膝が外側にブレて、変形性膝関節症の発症リスクが4倍になります |
O脚は膝の変形のみでなく、足の変形にもつながる |
O脚(内反膝)とは?見た目の特徴から膝への影響・予防法
はじめに
O脚(内反膝)とは、まっすぐ立ったときに両膝の間が開いてしまい、脚全体がアルファベットの「O」の字のように見える状態です。
乳幼児は生後~2歳頃までは膝が外向きに湾曲したO脚ですが、学童期には一時的に軽いX脚(内股)を経て、思春期以降には自然とほぼまっすぐになります。
そのため幼児のO脚は心配ありませんが、成長後も顕著なO脚が残る場合は注意が必要です。
O脚になる原因は様々で、生まれつきの骨格の特徴(体質)によるものや、ケガや病気による後天的なものがあります。
先天的なケースは骨格の形そのものによる「構造的なO脚」で、小児期の発育段階や遺伝的要因が関係します。
一方、後天的なケースでは、交通事故などによる骨折や靭帯損傷などの外傷による後遺症、加齢に伴う軟骨のすり減りなどによってO脚が進行することがあります。
変形性膝関節症が進んで膝関節の内側部分が潰れたりすると、その影響で脚がO脚に曲がってしまいます。一度骨の形が変形してしまうと自然に元通り真っ直ぐに戻すのは難しいため、進行をできるだけ抑えることが重要です。
O脚が膝に与える影響
脚がO脚に曲がっていると、膝関節にかかる体重のバランスが崩れます。
まっすぐな脚なら体重は膝の内側と外側に均等にかかりますが、O脚では体重の重心線が膝の内側寄りを通るため膝の内側にばかり負担が集中します。
常に内側へ押し込むような力(内反の力)が働き、逆に外側は引き離す力がかかる状態です。
その結果、膝関節の内側にある軟骨や半月板に過剰な圧力がかかり、徐々に摩耗(すり減り)が進んでいきます。
クッションの役割である半月板も傷みやすく、半月板が損傷すると膝の安定性が低下して軟骨が一層すり減るという悪循環に陥ります。
軟骨が減って膝の関節の隙間が狭くなると、膝はさらに外側に曲がり(O脚悪化)、ますます荷重の偏りが強まります。
このように「O脚 → 内側軟骨の摩耗 → 膝の変形進行 → さらにO脚悪化」という悪循環が起きやすくなります。
長年続くと膝関節は内側が潰れるように変形し、外側の靱帯が引き伸ばされて関節が不安定(ガクガク)になってしまいます。
最近では、静止時の脚の曲がり具合だけでなく歩行時の膝のブレも膝関節の摩耗に影響することがわかっています。
歩くときに膝がガクッと外側に揺れる現象が見られる人は、変形性膝関節症が進行しやすく、そのリスクが約4倍にもなると言われています。つまり日常の歩き方や膝の使い方も含め、膝への負担が大きく偏ると将来的な関節のダメージにつながりやすいということです。
O脚と変形性膝関節症
O脚は将来的に変形性膝関節症(膝の骨関節が変形して痛みが出る疾患)を発症させる大きな危険因子です。
実際、高齢者の変形性膝関節症患者さんにはO脚を呈している方が非常に多く見られます。
O脚そのものが内側の軟骨への負担を増やし変形性膝関節症を招く一方、いったん変形性膝関節症が進行すると軟骨が減って脚の曲がりがさらに強くなるため、O脚は変形性膝関節症の「原因であり結果でもある」と言えます。
この悪循環に陥ると治療しない限り徐々に症状が悪化しやすくなります。
O脚と変形性膝関節症の密接な関係が示されています。変形性膝関節症のある人では、O脚が強いほど膝内側の軟骨が悪化・関節症が進行しやすく、リスクが数倍にも高まると言われています。
また内反型の変形性膝関節症(軟骨が内側から減るタイプ)の末期には、ほぼ例外なくO脚変形が確認されたとの報告もあります。
さらに、重度のO脚では膝だけでなく足首や足の骨格にも影響が及ぶ場合があります。
脛の骨の角度が変わり足首の骨格にも負荷がかかるため、足首の内側の軟骨がすり減ってしまったり、足のアーチ(土踏まず)が落ちて扁平足になったり、外反母趾を併発するケースもあります。
O脚は下半身全体のバランスを崩してしまう可能性がある点にも注意が必要です。
O脚を予防・改善するには
では、O脚による膝への悪影響を防ぐにはどうすれば良いでしょうか。
以下に主なポイントを挙げます。
-
太ももやお尻の筋力を鍛える運動:
膝を支える筋肉を強化することで関節への衝撃を和らげ、O脚による負担を軽減できます。
特に太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)やお尻の筋肉(大臀筋・中臀筋)を鍛えると膝関節が安定し、歩行時に膝が内側に崩れにくくなる効果があります。 -
体重管理(減量):
体重が重いとそれだけ膝にかかる荷重も増えるため、適正体重を維持することが非常に重要です。
体重を1kg減らすごとに膝への負担は約4kg分軽減されると言われています。
日常的にかかる負荷を減らすことで軟骨のすり減りを抑え、痛みの予防につながります。
食事の見直しや無理のない範囲での運動による減量は、O脚の進行を抑える上でも大きな効果が期待できます。 -
装具の活用(インソール):
靴の中敷き(インソール)を工夫する方法も有効です。
外側が厚めの楔形(くさび型)インソールを靴に入れることで、膝の荷重ラインをやや外側にシフトさせる効果が期待できます。
市販のインソールもありますが、整形外科で作成してもらうと自分の足に合ったより良いサポートが得られます。 -
進行した場合は手術も検討:
O脚が重度で痛みが強い場合、外科的に脚の軸を矯正する方法があります。
比較的若くて軟骨がまだ残っているケースでは、脛の骨を部分的に切って角度を変える骨切り術によって脚を真っ直ぐにする手術が行われます。
一方、膝の軟骨がほとんど失われて末期状態になった場合は、人工膝関節置換術(人工関節への置き換え手術)が検討されます。
変形した関節表面を人工物に置き換えることで、O脚に曲がった膝をまっすぐな状態に矯正し、痛みの大幅な軽減と歩行能力の改善が期待できます。
ただし人工関節には寿命(耐用年数)もありますので、年齢や症状に応じて医師と相談しつつ最適な治療法を選択します。 -
日常生活での工夫:
普段から膝に負担をかけない動作を心がけることも大切です。
歩く際には膝とつま先が同じ方向(正面やや外向き)を向くように意識し、極端なガニ股や内股歩きは避けましょう。
クッション性の高い靴を選んで衝撃を吸収したり、違和感を覚えたら早めに休息を取ることも予防につながります。
和式で正座ばかりする生活より、椅子に座るなど膝への負担が少ない姿勢に変えていくことも効果的です。
このように、O脚そのものを完全に矯正することは難しくても、筋力強化や体重管理などできることから始めれば膝への悪影響を軽減できます。
特に痛みが出る前から対策しておくことが肝心です。「自分の脚はO脚かも?」と感じたら、一度当院へ受診して膝の状態をチェックしてもらい、必要に応じて早めにケアを行いましょう。
参考文献
・Suardi C, Stimolo D, Zanna L, Carulli C, Fabrizio M, Civinini R, Innocenti M. Varus morphology and its surgical implication in osteoarthritic knee and total knee arthroplasty. J Orthop Surg Res. 2022 Jun 3;17(1):299.
・Da Cunha RJ, Kraszewski AP, Hillstrom HJ, Fragomen AT, Rozbruch SR. Biomechanical and Functional Improvements Gained by Proximal Tibia Osteotomy Correction of Genu Varum in Patients with Knee Pain. HSS J. 2020 Feb;16(1):30-38
・Cho SD, Youm YS, Kim JH, Cho HY, Kim KH. Patterns and Influencing Factors of Medial Meniscus Tears in Varus Knee Osteoarthritis. Knee Surg Relat Res. 2016 Jun;28(2):142-6.
・Sharma L, Song J, Dunlop D, Felson D, Lewis CE, Segal N, Torner J, Cooke TD, Hietpas J, Lynch J, Nevitt M. Varus and valgus alignment and incident and progressive knee osteoarthritis. Ann Rheum Dis. 2010 Nov;69(11):1940-5.
・Wink AE, Gross KD, Brown CA, Guermazi A, Roemer F, Niu J, Torner J, Lewis CE, Nevitt MC, Tolstykh I, Sharma L, Felson DT. Varus thrust during walking and the risk of incident and worsening medial tibiofemoral MRI lesions: the Multicenter Osteoarthritis Study. Osteoarthritis Cartilage. 2017 Jun;25(6):839-845.
・Huang Z, Zhang Z, Wang W, Chen F, Zhang H. The association between varus knee deformity and morphological changes in the foot and ankle in patients with end-stage varus knee osteoarthritis. J Orthop Surg Res. 2025 Jan 7;20(1):15.